退職届と退職願はどう違う?撤回できるのはどちらか、書き方とそのまま使える例文


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伝えると決めたあとで、次に手が止まるのが書類です。「退職届と退職願、どっちを書けばいいのか」「ネットの例文は縦書きばかりだけど、パソコンで作ってはいけないのか」——検索してみると、マナーの話ばかり出てきて、肝心の違いがよく分からないまま時間だけが過ぎていきます。

先に言ってしまうと、**この2つの違いは「紙の格式」ではなく「撤回できるかどうか」**です。ここさえ分かれば、自分がどちらを書くべきかは数分で決まります。

この記事は、法律の条文と公的資料、社会保険労務士・弁護士による解説をもとに整理した調査記事です。読み終えたときに、書類を1枚書き始められるところまで進めます。

結論:先に押さえる3つ

  1. 退職願は「辞めさせてください」というお願い(申込み)、退職届は「辞めます」という通知。会社が承諾する前なら、退職願は撤回できる余地があると説明されています
  2. 辞表は会社員が出す書類ではない。役員や公務員が職を辞するときのもので、一般の社員が使うと意味がずれます
  3. まず就業規則を見て、会社所定の様式があるならそれに従う。様式が決まっている会社は珍しくなく、自作の書面より話が早く進みます

1. 3つの書類は役割が違う

書類 意味合い 主に使う人 撤回
退職願 労働契約を合意で終わらせたいという申し出(お願い) 一般の社員 会社が承諾するまでは撤回できる余地があるとされる
退職届 退職することを確定的に伝える通知 一般の社員 会社に届いた後は、原則として撤回できないとされる
辞表 役職・職そのものを辞する意思表明 会社役員、公務員

退職願の提出は「合意して契約を終わりにしませんか」という申込みにあたり、会社の承諾があって初めて成立する、という整理が一般的です。一方の退職届は、承諾を待たずに一方的に契約を終わらせる意思表示として扱われます。この違いがそのまま、撤回できるかどうかの違いになります。

撤回について、実務でよく引かれるのが最高裁の判断(大隈鐵工所事件・昭和62年9月18日)です。 退職願を受け取ったのが人事について決裁する権限のある担当者であれば、その受理をもって会社の承諾があったといえる、という趣旨で理解されています(退職届の撤回は認められるか – 福岡第一法律事務所)。

つまり「退職願なら、いつでも取り消せる」ではありません。取り消せる可能性があるのは、権限のある人が受け取るまでの短い間だけ、と考えておくほうが現実に近くなります。

なお、期間の定めのない雇用(いわゆる正社員など)であれば、退職の申入れから2週間の経過で雇用が終了するというのが民法第627条第1項の建てつけです(民法 – e-Gov法令検索)。詳しくは退職は何ヶ月前に言えばいいかで整理しています。

迷ったときの選び方

  • もう気持ちが固まっていて、日付も決めている → 退職届
  • 上司と退職日を相談する余地を残したい/円満に進めたい → 退職願
  • 会社に所定の様式がある → 迷わずそれを使う(名称が「退職届」でも「退職願」でも、会社のルールが優先)

多くの会社では、口頭で伝えて退職日の合意ができた後に、記録として1枚提出する流れになります。その段階なら、名称が退職届でも退職願でも実務上の扱いはほぼ変わりません。書類の種類で悩んで提出が遅れるほうが、影響は大きいというのが率直なところです。

2. 書類を出す前に必ずやること

書類は、口頭で伝えたに出すのが基本です。何も言わずに机に置いたり郵送したりすると、それだけで話がこじれます。

順番は次のとおりです。

  1. 就業規則で「退職の予告期間」と「所定の様式・提出先」を確認する
  2. 直属の上司に口頭で伝え、退職日をすり合わせる(退職の切り出し方とタイミングに例文があります)
  3. 合意した退職日を書いて、書類を提出する

厚生労働省のモデル就業規則でも、自己都合で退職する場合は退職する日より前に届け出る旨が定められており、多くの会社の規則がこれに近い形になっています。まず自社の規則を開くのが、いちばん確実な近道です。

そもそも切り出せずに止まっている場合は、仕事を辞めたいけど言えないを先に読んでください。

3. そのまま使える例文

退職届(縦書き・手書きの場合)

退職届

私儀

このたび一身上の都合により、来る令和八年十月三十一日をもって
退職いたしたく、ここに届け出申し上げます。

令和八年九月二十日
          営業部 山田 太郎 ㊞

株式会社〇〇
代表取締役 〇〇 〇〇 殿

退職願(語尾だけが変わります)

退職願

私儀

このたび一身上の都合により、来る令和八年十月三十一日をもって
退職いたしたく、お願い申し上げます。

書き方のポイントは4つだけです。

  • **「私儀(わたくしぎ)」**は「私事ですが」という意味の書き出し。行の下のほうに小さく書きます
  • 日付は2つ。本文に入れるのが退職日、下に書くのが提出日です。混同しやすい箇所なので、退職日は口頭で合意した日付をそのまま書きます
  • 宛名は会社の代表者(代表取締役)。敬称は「殿」。自分の氏名より上の位置に書きます
  • 縦書きなら数字は漢数字が一般的です

横書き・パソコン作成でもいいのか

会社所定の様式がなく、社内で書類の電子化が進んでいるなら、横書きやパソコン作成でも差し支えないとされています。手書き・縦書きは法律上の要件ではなく、あくまで慣習です。 迷ったら、総務に「様式の指定はありますか」と一言確認するのがいちばん早く、失礼もありません。

横書きの場合は、表題を中央に、日付と氏名を右寄せ、宛名を左寄せにするのが一般的な体裁です。氏名は自筆で書き、押印しておくと丁寧です(押印も法的な必須要件ではありません)。

4. 退職理由は「一身上の都合」でいい。ただし1つだけ注意

自分の意思で辞める場合、理由は**「一身上の都合により」**とだけ書きます。詳しい事情や不満を書く必要はありませんし、書かないことが失礼にもあたりません。

注意が必要なのは、会社側の事情で辞めることになった場合です。 退職勧奨を受けた、契約が更新されなかった、といったケースで「一身上の都合」と書いてしまうと、自己都合で辞めたという方向の材料になり得ます。雇用保険の基本手当(失業給付)は、離職理由によって受け取り始める時期や日数が変わるためです。

この場合は「会社都合により」と書く、あるいは書類の提出前に、離職理由をどう扱うかを会社と確認しておくのが安全です。

ただし、退職届の文言だけで離職理由が決まるわけではないとも説明されています。離職票の内容に納得できないときは、離職票の「事業主が○を付けた離職理由に異議 有り・無し」の欄で「異議 有り」を選び、ハローワークに申し出て相談することができます(ハローワークインターネットサービス)。

自分がどちらにあたるか判断がつかないときは、書類を出す前に、後述の公的な相談窓口で確認してください。ここは急いで出すより、一度止まって確認する価値がある箇所です。

5. 用紙・封筒・渡し方

法的な決まりはありませんが、実務でおおむね共通している形は次のとおりです。

項目 一般的な形
用紙 白無地のB5またはA4。便箋は罫線のみのもの
筆記具 黒のボールペンか万年筆(消せるペンは避ける)
折り方 下から三つ折り
封筒 白無地・郵便番号枠なし。B5用紙なら長形4号、A4なら長形3号
封筒の表 中央に「退職届」(または「退職願」)
封筒の裏 左下に部署名と氏名
渡し方 直属の上司に手渡し。封はのり付けせず、折り返すだけでも可

コピーかスマートフォンの写真で、提出した書類の控えを必ず自分の手元に残してください。 日付と内容を後から確認できる状態にしておくことが、揉めたときにいちばん効きます。

6. 受け取ってもらえないときの考え方

「退職は認めない」「後任が決まるまで預かる」と言われて書類を突き返されることがあります。ここで押さえるべきは、受理や承認は、法律が定める退職の条件として書かれていないという点です。

意思表示は相手に到達した時点で効力を生じる、というのが民法第97条の原則で、正当な理由なく到達を妨げられた場合の扱いも定められています(民法 – e-Gov法令検索)。そのため実務では、届いたことが記録に残る形にしておくことが勧められています。

  • メールで送って送信済みを残す
  • 郵送なら特定記録郵便、確実を期すなら内容証明郵便を使う

そのうえで、こじれる気配があるなら早めに第三者を挟んでください。いずれも無料で、相談したこと自体が会社に伝わるわけではありません。

  • 総合労働相談コーナー:全国の労働局・労働基準監督署などに設置され、労働問題をワンストップで相談できます(厚生労働省)
  • 労働条件相談ほっとライン:0120-811-610。平日17:00〜22:00、土日祝9:00〜21:00(確かめよう労働条件 – 厚生労働省)
  • こころの耳:働く人のメンタルヘルス相談。電話・SNS・メール、無料・匿名(厚生労働省)

体調的に出社が難しい、上司と会話が成立しない、という場合には退職代行という選択肢もあります。ただし運営主体(民間企業・労働組合・弁護士)によってできる範囲が違うため、選び方は退職は何ヶ月前に言えばいいかの該当箇所を参照してください。

7. 出した後にやること

書類を出したら、退職日までに受け取るもの・返すものを確認しておきます。

  • 返すもの:健康保険証、社員証、貸与PC・備品、名刺、通勤定期(現物支給の場合)
  • 受け取るもの:離職票、雇用保険被保険者証、年金手帳(会社預かりの場合)、源泉徴収票

また、退職した人が請求した場合、使用者は勤務期間や業務の種類、退職の事由などについての証明書を交付しなければならないとされています(労働基準法第22条/労働基準法 – e-Gov法令検索)。離職票が届くまで時間がかかることもあるため、転職先から在籍の証明を求められそうなら、退職証明書を請求できることを覚えておくと安心です。

次の仕事をどうするかは、退職日が決まってから考えても遅くはありません。ただ、在職中に情報収集だけ始めておくと、退職後の選択肢は確実に増えます。20〜30代向けの転職エージェントは、登録や初回の面談を無料で行っているところが多く、「まだ辞めると決めていない段階」でも相談は可能です。(20代の第二新卒・既卒: UZUZ第二新卒 / 23〜35歳: ASSIGN AGENT / メーカー・製造業: メーカー・製造業に特化!経験豊富なコンサルが導く転職支援【メーカーズジョブ】。いずれも無料で、登録しても転職を強制されることはありません)

今日できる一歩

書類はまだ書かなくて構いません。次のうち1つだけ選んでください。

  1. 就業規則を開いて、退職の届け出に所定の様式があるか確認する(社内イントラや総務で閲覧できます)
  2. 上司に伝える日を決める(書類はその後で間に合います)
  3. 会社都合で辞めることになりそうなら、離職理由の扱いを公的窓口に確認する
  4. すでに退職日が決まっているなら、この記事の例文をコピーして、日付と氏名だけ埋める

退職届は、うまく書けたかどうかを誰かに採点される書類ではありません。必要なのは、退職日と氏名が正しく書かれた1枚だけです。


参考・出典

※本記事は公的資料と専門家による解説をもとに整理した情報記事であり、法律の専門的助言ではありません。用紙や封筒などの作法は法的な要件ではなく慣習です。個別の判断は公的窓口・専門家にご確認ください。